Clash・VPN・プロキシサービスは、同じ種類のものではない
Clashは通信を取り込み、ルールに応じて接続先へ振り分けるクライアントや設定エコシステムです。VPNは端末とネットワークの間にトンネルを作る技術、プロキシサービスは通信の中継先を提供するサービスを指します。この3つは比較する階層が異なるため、「ClashとVPNのどちらが安全か」だけでは判断できません。Clash系クライアントをVPNサービスのノードと組み合わせて使うこともあれば、VPNアプリだけで通信を保護することもあります。
Clashという名前は、クライアント、設定形式、プロキシコアをまとめて指すように使われることがあります。現在のクライアントにはmihomo(旧Clash.Meta)などを採用するものがあり、対応するプロトコルや設定項目は製品とコアのバージョンによって異なります。Clash Verge Revなどの画面で設定を読み込んでも、それだけで利用可能な接続先が用意されるわけではありません。接続に必要なノードや設定は、対応するサービス提供元から入手します。
- Clash系クライアント:プロキシ設定やルールを読み込み、対象になった通信をローカルポートまたはTUN経由で受け取って振り分けます。
- VPN技術・VPNアプリ:端末の通信を仮想的なトンネルへ送り、VPNサーバーを経由させます。OSのVPN機能を使って端末全体の通信を扱う製品が多くあります。
- プロキシサービス:利用者に中継サーバーや接続用の設定を提供します。サービスごとにプロトコル、対応アプリ、暗号化の有無、利用条件が異なります。
通信経路と暗号化を分けて考える
「通信をどう取り込むか」「どの出口へ送るか」「その経路が暗号化されるか」は別の観点です。Clashでは、システムプロキシやTUNが主に通信の取り込みに関係し、ルールモードやグローバルモードが取り込んだ通信の振り分けに関係します。モードを変えても、アプリがクライアントを経由していなければ結果は変わりません。
- ブラウザーなどのアプリが通信を開始します。
- システムプロキシに従うアプリはローカルのプロキシポートへ接続します。TUNを使う構成では、仮想ネットワークインターフェースなどを通じて、より広い範囲の通信を取り込む場合があります。
- Clashのコアが設定のルールを評価し、
DIRECT、プロキシノード、または拒否などの処理先を選びます。 - 選択された経路を通って接続先へ通信します。実際の暗号化方式は使用するプロトコルや接続先によって異なります。
一般的なVPNアプリはOSのVPN機能を利用して、端末の通信をVPNトンネルへ送る構成をとります。ただし、VPN接続中でもアプリ単位の除外、スプリットトンネル、DNSの扱いなどによって、すべての通信が同じ経路を通るとは限りません。また、VPN接続は端末からVPNサーバーまでの経路を保護するものであり、接続先のWebサイトやサービス運営者から利用者を完全に見えなくする機能ではありません。
ClashのTUNもVPNと同一のサービスではありません。TUNは通信を取り込むための仕組みで、TUNを有効にしただけで暗号化されたリモートトンネルが作られるわけではありません。ルールでDIRECTに振り分けられた通信は、通常、ローカルネットワークから接続先へ直接送られます。ノード経由になるか、暗号化されるかは、選択した接続先とプロトコルを確認しましょう。
使い方から自分に合う選択肢を決める
設定を細かく調整せず、端末全体の通信を一つのアプリで扱いたい人には、使いやすさや対応OSが明記されたVPNアプリが候補になります。Webブラウザーだけでなく、アプリごとの通信も対象にできるか、常時接続や切断時の遮断機能があるかを確認してください。これらの機能は製品やOSによって異なります。
サイトやアプリごとに接続先を変えたい、既存の設定にあるルールやプロキシグループを活用したい場合は、Clash系クライアントが適しています。ただし、設定ファイル、ルール、ノードの意味をある程度理解する必要があります。提供元の設定形式と、クライアントが採用するコアの互換性も確認しましょう。
- 手軽さを優先:VPNアプリの対応OS、操作手順、接続先の選択肢、料金や更新条件を比較します。
- 通信ごとの振り分けを優先:Clash系クライアントで利用できるルール、プロキシグループ、必要なシステム権限を確認します。
- 家庭内や社内ネットワークへの接続が目的:組織やネットワーク管理者が指定したVPN方式、認証情報、端末ポリシーに従います。一般向けプロキシサービスを代用できるとは限りません。
- プライバシーが目的:暗号化の範囲だけでなく、提供元の運営主体、保存するログ、アカウント情報、支払い方法、利用規約も調べます。
「速度が速いほう」を名前だけで選ぶのは避けましょう。実際の速度や安定性は、端末、回線、接続先サーバー、混雑状況、通信先の制限によって変わります。速度テストの数値だけでなく、普段使うサービスへの接続可否、切断の頻度、必要なアプリが対象になっているかを確認するのが実用的です。
導入前に確認することと、最初の設定手順
どの方式を選ぶ場合も、配布元と設定の入手元を確認することが重要です。Clash系クライアントは、利用する端末に合った正規の配布ページから入手します。設定やサブスクリプションURLは、利用権限のあるサービス提供元から取得してください。VPNアプリについても、提供元、対応OS、更新履歴、必要以上の権限を求めていないかを確認します。
- 利用する端末と目的を決めます。たとえば、ブラウザーだけで使うのか、複数のアプリを含む端末の通信を扱うのかを書き出します。
- クライアントまたはVPNアプリをインストールする前に、提供元とOSの対応条件を確認します。Clash系では、設定が要求するプロトコルや項目をコアがサポートしているかも調べます。
- サービス提供元から設定や接続情報を取得し、アプリに追加します。インポート後は、設定が選択中か、ノードやサーバーが表示されるか、エラーが出ていないかを確認します。
- 最初は必要な機能だけを有効にします。ClashではシステムプロキシまたはTUNのどちらを使うか確認し、両方を同時に変更せずに通信を試します。
- 接続ログや接続状態を確認し、目的のアプリの通信が想定した経路を通っているかテストします。問題があれば、変更した設定を戻し、ネットワーク、ルール、ノードを一つずつ切り分けます。
サブスクリプションURLには、設定を取得するための認証情報が含まれることがあります。URL全体、ノード名、パスワードをスクリーンショットや公開チャットに載せないでください。また、知らないサイトに設定ファイルをアップロードして検証するのも避けましょう。内容を第三者に見られるおそれがあります。
まずクライアントの入手先と基本的な設定手順を確認したい場合は、インストール案内と設定の手順を参照してください。サービスの利用条件や安全性はクライアントだけでは判断できないため、接続先を提供する事業者の情報も別途確認しましょう。